結論を先に言うと、この問いは「半分正しく、半分違う」というのが実際のところです。今の地球が自然に暖かい時期(間氷期=かんぴょうき。氷期と氷期の間にはさまれた、比較的暖かい時代)にあることは事実です。地球はもう何十万年も、寒い時代と暖かい時代を交互に繰り返してきました。ところが、今の”温まる速さ”だけは、そのリズムのどこにも当てはまりません。「自然だから安心」でも「全部が人類のせい」でもない、その真ん中にある話をこの記事ではたどっていきます。
前の記事「日本列島の成り立ち」で、氷河期に海面がおよそ120m下がり、日本列島と大陸をつなぐ3つの道が開いたことを見てきました。今回はそこからの寄り道です。ニュースでよく耳にする「氷河期」と「地球温暖化」という2つの言葉、実はひとつの大きな地球のリズムの中でつながっています。そのリズムを知ると、今起きている変化の”何が普通で、何がそうでないのか”が、自分の言葉で説明できるようになります。
日本アルプスの山あいには、氷河期にできた「カール地形」(氷河がゆっくり山肌を削り、お椀のようにえぐりとってできた谷)が今も残っています。地球の反対側、南極やグリーンランドでは、降り積もった雪が何十万年分も重なって分厚い氷になり、そのときどきの空気の泡までそのまま閉じ込められています。この氷を細長い棒状に掘り抜いたものを「氷床コア(ひょうしょうこあ)」と呼びます。日本は氷期という現象の”道”を実際に歩いた側、南極やグリーンランドはその”記憶”を氷の中に保存した側——この2つをつなぐと、地球の呼吸がどんなリズムを刻んできたかが見えてきます。
一枚のグラフを思い浮かべてください。横軸は過去80万年、縦軸は気温と、空気中の二酸化炭素(CO2)の濃度です。この2本の線は、80万年のほとんどの区間で、まるで手をつないだ双子のように、上がるときも下がるときもぴったり寄り添って動いてきました。ところが、グラフのいちばん右端——ほんのわずかな期間だけ、様子が変わります。CO2の線が、それまで一度も届いたことのない高さまで一気に跳ね上がり、気温の線を置き去りにするようにして先へ進んでいくのです。80万年分の「普通」から、直近だけがはみ出している。この一枚のグラフこそ、今回の物語の主役です。
この記事を読み終えると、「地球温暖化は自然な氷期・間氷期のサイクルの一部にすぎないのか、それとも人類が起こした特別な出来事なのか」という、ニュースやSNSでたびたび対立する2つの言い分に対して、「速さ」というたったひとつのものさしで、自分なりに答えを出せるようになります。それでは、地球のリズムをたどる旅を始めましょう。
第1章 今は「自然な間氷期」で合っているのか

まず、いちばん基本のところから確認しておきます。地質学(ちしつがく=地球の成り立ちや歴史を岩石や地層から調べる学問)の分類でいうと、私たちは現在、「完新世(かんしんせい)」と呼ばれる時代の中にいます。これは、今からおよそ1万1700年前(資料によってはおよそ1万年前とも紹介されます)に始まったとされる、比較的暖かい時代です。
この「比較的暖かい時代」のことを、専門的には間氷期と呼びます。氷期(ひょうき=地球全体が寒くなり、大陸の上に分厚い氷が広がる時代)と氷期のあいだにはさまれた、暖かい時期のことです。つまり、今この瞬間の地球は、氷期ではなく間氷期のまっただ中にいる——これは、はっきりとした事実です。
前の記事「日本列島の成り立ち」では、いちばん新しい氷期(最終氷期)がおよそ7万年前から1万年前まで続き、もっとも寒かった時期には世界中の海面が最大で約120mも下がっていたことをお伝えしました。その氷期がどうやって日本列島と大陸をつなぐ道を開いたのかは、そちらの記事で詳しくたどっています。今回の記事は、その氷期が終わったあと、なぜまた暖かくなったのか、そしてその暖かさが今どうなっているのか、という続きの部分にあたります。
ここでまず言えるのは、「地球が寒い時代と暖かい時代を交互に繰り返すこと自体は、地質学的にはまったく”普通”の出来事だ」ということです。地球はこれまでに、氷期と間氷期の入れ替わりを、数万年から十万年という周期で、何度も何度も繰り返してきました。今の暖かさも、その長いリズムの中のひとコマにすぎません。
では、そのリズムはいったい何が引き起こしているのでしょうか。次の章では、そのリズムの正体――地球そのものが刻んでいる、天文学的な”呼吸”の仕組みに迫ります。
- 私たちは現在、およそ1万1700年前(資料によっては1万年前とも)に始まった「完新世」という間氷期の中にいる。
- 間氷期とは、氷期と氷期のあいだにはさまれた、比較的暖かい時代のことをいう。
- 寒い時代と暖かい時代の入れ替わりそのものは、数万〜十万年周期で繰り返されてきた、地質学的には”普通”の現象である。
第2章 ミランコビッチ・サイクル——地球が”呼吸”する3つのリズム

氷期と間氷期がなぜ交互にやってくるのか。その理由のひとつとして広く知られているのが、「ミランコビッチ・サイクル」と呼ばれる天文学的なリズムです。セルビアの地球物理学者ミルティン・ミランコビッチが体系づけたことから、この名前がついています。
むずかしく聞こえますが、要は次の3つの動きの組み合わせです。地球という星が、太陽に対して少しずつ姿勢を変えている、と考えるとイメージしやすいかもしれません。
- 離心率(りしんりつ)の変化——地球が太陽のまわりを回る軌道の形が、円に近くなったり、楕円に近くなったりする変化。周期はおよそ10万年。
- 地軸の傾きの変化——地球の自転軸の傾きが、大きくなったり小さくなったりする変化。周期はおよそ4万1000年。
- 歳差運動(さいさうんどう)の変化——地球が独楽(こま)のように首を振るような動きの変化。周期はおよそ2万3000年。
この3つはそれぞれ別々の長さの周期で動いています。だから、あるときは3つが打ち消し合い、あるときは重なり合って、地球全体が太陽から受け取る日射量(にっしゃりょう)のバランスを、長い時間をかけてゆっくり変化させていきます。これが、氷期と間氷期を交互に呼び起こすリズムの正体のひとつだと考えられています。
| リズム | 内容 | おおよその周期 |
|---|---|---|
| 離心率 | 公転軌道の丸さ(円⇔楕円)の変化 | 約10万年 |
| 地軸の傾き | 自転軸の傾きの大小の変化 | 約4万1000年 |
| 歳差運動 | 独楽のように首を振る動きの変化 | 約2万3000年 |
ここで大切なのは、このリズムが途方もなくゆっくりだということです。地軸の傾きひとつをとっても、ひと目盛りの変化に4万年以上かかります。人間の一生どころか、文明の歴史全体よりも長い時間をかけて、地球はこの”呼吸”を繰り返してきました。この「ゆっくりさ」こそが、のちの章で見る”速さの違い”を測るときの、いちばんのものさしになります。
- 氷期・間氷期のリズムの一因が「ミランコビッチ・サイクル」という天文学的な変化である。
- 離心率(約10万年)・地軸の傾き(約4万1000年)・歳差運動(約2万3000年)という、3つの異なる周期が組み合わさっている。
- このリズムは数万年単位という、途方もなくゆっくりとした変化である。
第3章 氷に刻まれた80万年の日記

ミランコビッチ・サイクルが理屈の上でのリズムだとしたら、そのリズムが実際に地球の気候をどう動かしてきたのかを、実物の証拠として見せてくれるのが、南極やグリーンランドの氷です。
南極大陸のボストーク基地やEPICA(欧州の南極氷床深層掘削計画)などの研究チームは、南極の分厚い氷を、地表から深い場所まで、まっすぐ棒状に掘り抜いてきました。これが氷床コアです。雪が降り積もって氷になるとき、そのときどきの空気が、小さな気泡としてそのまま氷の中に閉じ込められます。つまり氷床コアは、地球が何十万年もかけてつけてきた、いわば”日記”のようなものなのです。深い場所ほど古い時代の空気が閉じ込められており、氷を輪切りにして分析すれば、その時代の気温や大気の成分を読み取ることができます。
この氷床コアの分析から、過去80万年にわたって、気温の変化とCO2(二酸化炭素)濃度の変化が、驚くほどぴったり連動してきたことがわかっています。気温が上がるときはCO2濃度も上がり、気温が下がるときはCO2濃度も下がる。この間、自然な変動の範囲でのCO2濃度は、およそ180ppmから280ppmのあいだを行き来してきたとされています(ppm=百万分率。空気の分子100万個のうち、CO2の分子が何個含まれているかを表す単位です)。氷期のもっとも寒い時期には180ppm前後まで下がり、間氷期の暖かい時期には280ppm前後まで上がる——このリズムが、少なくとも80万年のあいだ繰り返されてきました。
気温とCO2濃度が連動しているからといって、「CO2が増えたから必ず気温が上がる」という一方向の関係だけが起きているとは限りません。氷期・間氷期のサイクルでは、まずミランコビッチ・サイクルによる日射量の変化がきっかけとなり、それによって海や陸に含まれるCO2の出入りが変化し、その変化がさらに気温変化を後押しする、という複雑な絡み合いが起きていたと考えられています。「連動している=すべて同じ原因で動いている」と単純化しすぎないことが、ここでは大切です。
このように、地球そのものが刻んできた気候の記憶をたどるという点で、氷床コアの研究は、地球が46億年かけてどんな歴史を歩んできたかという、もっと大きな物語ともつながっています。80万年という長さは、地球全体の歴史からすればほんの一瞬にすぎませんが、それでも人類にとっては十分すぎるほど長い”日記”です。そして次の章では、この日記の”直近の1ページ”だけに、これまでとは違う変化が記録されていることを見ていきます。
- 南極やグリーンランドの氷を掘り抜いた「氷床コア」には、過去の空気がそのまま気泡として閉じ込められている。
- 過去80万年、気温とCO2濃度はほぼ連動して変化してきた。自然な変動幅はおよそ180〜280ppm。
- 気温とCO2の連動には、ミランコビッチ・サイクルをきっかけとした複雑な絡み合いがあり、単純な一方向の因果関係だけとは言い切れない。
第4章 核心:”速さ”がまったく違う

ここまでの3つの章で、「今が自然な間氷期であること」「そのリズムが数万〜十万年という天文学的な周期であること」「その記憶が氷床コアに80万年分刻まれていること」を見てきました。ここからが、この記事のいちばんの核心です。
氷床コアの記録によれば、自然な氷期から間氷期への移り変わりは、気温にしておよそ4〜5℃の変化を、数千年から1万年ほどの時間をかけて達成してきました。地球にとっては、これでも十分に”速い”変化だったとされています。ところが、現在起きている気温の上昇は、これとはまったく違うペースで進んでいます。
産業革命以降のおよそ150年ほどのあいだに、地球の平均気温はすでに1℃前後上昇したとされています。単純に速さだけを比べると、自然な氷期・間氷期の移り変わりのおよそ10倍というペースです。さらに、現在の大気中のCO2濃度はすでに420ppmを超えており、これは氷床コアが記録している80万年間のどの時点でも見られなかった水準だとされています。
| 自然な氷期→間氷期の変化 | 現在の変化 | |
|---|---|---|
| 気温の変化幅 | およそ4〜5℃ | およそ1℃前後(産業革命以降) |
| かかった時間 | 数千年〜1万年ほど | およそ150年ほど |
| おおよその速さ | 基準となるペース | 自然の約10倍のペース |
| CO2濃度 | 自然の変動幅は約180〜280ppm | 現在420ppm超(80万年で前例のない水準) |
さらに興味深いのは、”向き”の問題です。ミランコビッチ・サイクルの軌道要因だけを見ると、地球は今、本来ならゆっくりと次の氷期に向かっていく局面にあたるという見方があります。ところが実際には、地球はまったく逆方向、つまりさらに暖かくなる方向へと急速に進んでいます。自然のリズムが向かおうとしている方向と、実際に起きている変化の方向が、逆転してしまっている——これが、今の温暖化が「ただの自然なサイクルの一部」とは言い切れない、大きな理由のひとつです。
「CO2濃度の上昇と気温上昇の主な原因が人類の活動である」という見方は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)をはじめとする、現在の主流の科学的な見解として広く共有されています。ただしこれは、実験室で100%証明された絶対の真実というよりも、世界中の観測データやモデル研究を積み重ねた結果、専門家のあいだで高い確度で一致している、という表現がより正確です。「相関している」ことと「原因だと証明されている」ことは、厳密には少し違うニュアンスを持つ、という点は、誠実に区別しておきたいところです。この記事では、温暖化を否定することも、必要以上に不安をあおることも目的にはしていません。あくまで、氷床コアという実物の記録が示す”速さ”という事実を、そのまま見つめることを大切にしています。
- 自然な氷期→間氷期の変化は、数千年〜1万年で気温がおよそ4〜5℃動く、というペースだった。
- 現在の気温上昇は、およそ150年で1℃前後——自然な変化のおよそ10倍の速さで進んでいる。CO2濃度も420ppm超と、80万年間で前例のない水準にある。
- 軌道要因だけならゆっくり次の氷期へ向かう局面のはずが、実際には逆方向(温暖化)へ急速に進んでいるという”向きの逆転”が起きている。
第5章 次の氷期はいつ来るのか

「今は間氷期の中にいる」ということは、いずれまた氷期がやってくるのでしょうか。この問いに対しては、現時点でいくつかの見方が併存しています。
ひとつは、人類が大気中のCO2濃度を大きく変化させなかった場合を想定した見方です。ミランコビッチ・サイクルの軌道要因だけをもとに計算すると、次の氷期はおよそ5万年後にやってくる、という説があります。
もうひとつは、現在すでに人類が大気中に大量のCO2を排出してしまったことを踏まえた見方です。CO2は自然のスピードで吸収されるまでに非常に長い時間がかかり、その温室効果が長く残るため、本来やってくるはずだった次の氷期そのものが、さらに大きく先延ばしされる可能性がある、という研究があります。研究によっては、人類が排出したCO2が、まるまる一回分の氷期のサイクルを飛ばしてしまい、次の氷期が数万年から十万年という規模で遠ざかる、という試算も示されています。
IPCCの報告書でも、現在のようなCO2の水準がこのまま続いた場合、少なくとも今後5万年以上は、次の氷期が訪れない可能性がある、といった趣旨の見解が示されたことがあります。どの数字も、あくまで現時点でのモデル計算にもとづく見立てであり、将来のCO2排出量や自然の吸収の仕方によって変わりうるものです。「約5万年後」なのか「それよりさらに大きく先延ばし」なのか、はっきり断定できる段階にはまだない、というのが誠実な言い方になります。
次の氷期がいつ来るかという問いは、天文学的な軌道要因(ミランコビッチ・サイクル)と、人類が排出したCO2の行方という、性質の異なる2つの要因が絡み合う、非常に難しい予測です。研究によって前提とする条件が異なるため、複数の数字が併存していること自体が、この分野の研究がまだ発展途上にあることを示しています。
いずれにせよ、少なくとも私たちが暮らす人生の時間スケールの中で、次の氷期が訪れる心配をする必要はなさそうです。むしろ問われているのは、もっと近い将来、今この瞬間に起きている”速すぎる変化”のほうだといえます。
- 次の氷期については、「自然な軌道要因だけならおよそ5万年後」という説がある。
- 一方、人類が排出したCO2の影響を踏まえると、その次の氷期がさらに数万年〜十万年という規模で先延ばしされる可能性がある、という研究もある。
- どちらの数字も現時点でのモデル計算であり、断定できる段階にはない。
第6章 日本アルプスの氷河地形と、南極の氷

ここでもう一度、記事のはじめに触れた「同じころ世界では」の話に戻りましょう。日本アルプス(飛騨山脈・木曽山脈・赤石山脈など)の山あいには、最終氷期のころにできたとされる「カール地形」が、今も地形として残っています。カール地形とは、氷河がゆっくりと山の斜面を削り、お椀のようにえぐれた谷のことです。氷そのものはとっくに姿を消していますが、その氷が動いた跡だけが、山の形として今も残されているのです。
前の記事「日本列島の成り立ち」で見たように、日本列島のまわりでは、氷期に海面が下がったことで、大陸とつながる陸の道が生まれました。人もマンモスもナウマンゾウも、その道を実際に歩いて渡っていきました。日本アルプスのカール地形は、その同じ氷期という現象が、海だけでなく山の姿かたちまで変えていた、という証拠でもあります。日本は、氷期という現象の”道”を実際に歩いた側の記録を、地形として残しているのです。
一方、地球の反対側にある南極やグリーンランドは、氷期という現象そのものの”記憶”を、氷床コアという形で保存してきました。日本アルプスの地形が「氷期があったこと」を教えてくれるとすれば、南極やグリーンランドの氷は「氷期が正確にいつ、どれくらいの気温とCO2濃度で起きていたか」という、細かな日付入りの記録を教えてくれます。同じ氷期というひとつの出来事が、地球の遠く離れた2つの場所に、まったく違う形の証拠を残していた——これが、この記事がたどってきた”つながりの糸”です。
氷床コアが教えてくれるのは、気温やCO2濃度の記録だけではありません。実は、火山が噴火した年まで、氷の中の成分から特定できることがあります。一説には、中世のある時期にヨーロッパなどで起きた深刻な飢饉(ききん)の背景に、遠く離れた場所で起きた大きな火山噴火があったのではないか、という見方があり、その噴火のおおよその年代を、氷の記録が裏づける手がかりになったとされています。この氷が語る”もうひとつの日付”の物語は、また別の記事で詳しくたどっていきます。
- 日本アルプスに残る「カール地形」は、最終氷期に氷河が山を削ってできた地形の跡である。
- 日本は氷期の”道”を実際に歩いた側、南極・グリーンランドは氷期の”記憶”を氷として保存した側——同じ氷期が、地球の遠く離れた2つの場所に違う形の証拠を残した。
- 氷床コアは気温やCO2濃度だけでなく、火山噴火の年代など、さらに細かな出来事の”日付”まで教えてくれる可能性がある。
第7章 まとめ——「普通」と「初めて」が同居する時代に生きている

ここまでの旅をふり返ってみましょう。今の地球が暖かい間氷期にあることは、数万年から十万年という地質学的なリズムの中では、まったく”普通”の出来事です。氷期と間氷期の入れ替わりは、ミランコビッチ・サイクルという天文学的なリズムに支えられ、80万年にわたって氷床コアの中に記録されてきました。
けれど、その”普通”の中に、ひとつだけ”初めて”のことが起きています。それが、この150年ほどのあいだに起きている気温上昇の”速さ”です。自然な氷期・間氷期の移り変わりのおよそ10倍というペースで、しかも本来なら次の氷期に向かうはずの局面で、まったく逆方向に気温が動いている。これは、80万年分の氷の日記のどこを探しても見つからない、新しいページです。
だからこそ、この記事の冒頭で示した「半分正しく、半分違う」という答えにたどり着きます。「今は自然に暖かい時期だから心配ない」という言い分も、「今の変化はすべて人類のせいだ」という言い分も、それぞれ半分だけを切り取った見方です。地球は確かに自然な暖かさの中にいます。そして同時に、そのリズムの外側で、これまでとは違う速さの変化が重なっている——この2つは、両方とも本当のことなのです。そして、そのうち”速すぎる変化”のほうについては、主な原因は人類の活動にあるという見方が、いまの科学の主流だとされています。
- 今の間氷期そのものは、数万〜十万年周期のリズムの中では”普通”の出来事である。
- 一方、現在起きている気温上昇の”速さ”は、80万年の氷の記録のどこにも見当たらない、新しい変化である。
- 「自然だから安心」でも「すべてが人類のせい」でもなく、両方の側面が同時に起きているのが、今の地球の姿である。
現代の窓
近年、猛暑や豪雨のニュースを見るたびに、「これは地球温暖化のせいなのか」「いや、これは自然な気候の変動なのか」という議論を目にすることがあります。この記事でたどってきたリズムを踏まえると、その問いへの答え方が少し変わってきます。
今の暑さの”背景”にあるのは、間氷期という自然な暖かさそのものではありません。そうではなく、間氷期という自然な暖かさの中で、これまでのリズムには存在しなかった”速さ”の変化が重なっている、という点にこそ、注目する価値があります。
この記事は、どちらか一方の立場を主張するためのものではありません。80万年分の氷の記録という、地球そのものが残した実物の証拠を、できるだけ正確に、誠実にたどることを目的にしています。ニュースで見かける「温暖化は嘘だ」「いや人類のせいだ」という単純な二択に出会ったとき、「どのくらいの速さで、何がリズムから外れているのか」という、この記事で見てきたものさしを思い出してもらえたらと思います。
そしてもうひとつ。地球が誕生してからおよそ46億年、その中で人類が”気候そのものを大きく左右しうる側”に回りつつある、という見方があります——これは、これから先の歴史を読み解いていくうえでも、覚えておきたい大きな転換点のひとつです。
この記事の参考情報源
- 気象庁
- 国立極地研究所(NIPR)
- IPCC(気候変動に関する政府間パネル) 第6次評価報告書(AR6)
- NASA
- NOAA(アメリカ海洋大気庁)
- 天文学辞典(日本天文学会)
- Wikipedia日本語版(入口として参照。本文の直接の根拠にはしていません)

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